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1型糖尿病障害年金支給停止処分取消等「再」訴訟

判決に対する弁護団声明(大要)

 本判決は、原告のうち1名の支給停止処分を取り消した部分は正当であるが、その余の8名の救済を認めなかった点は極めて不当である。すなわち、救済が認められなかった原告8名については、処分から3年後に理由を付け足すことを認めた上、平成28年当時の診断書に基づいて原告らの障害の状態が2級に該当しないと判断したものであり、原告らが以前に2級に認定され、その当時から症状の改善はなく、現在もなお日常生活が著しく制限されているという実態を全く考慮しなかった。また、一旦違法とされた処分と同一内容の処分であったことや翌29年分の支給停止処分が取り消された者との不公平な取扱いなどについてもこれを是認するなど、行政の恣意的な運用を追認した点においても司法の役割を放棄したものと言わざるを得ない。我々は、この不当な判決に屈することなく、国の違法な処分の取り消しを求めて引き続き戦う所存である。

1人勝訴8人棄却(令和3年5月17日 大阪地裁判決)

【判決要旨】

1 事案の概要

 ⑴ 原告らのうち8名(原告ら8名)は、いずれも、1型糖尿病にり患し、障害等級2級に該当する程度の障害の状態にあるとして障害基礎年金の裁定を受けてこれを受給していたが、厚労大臣から、国民年金法(法)36条2項本文の規定に基づく障害基礎年金の支給停止処分(支給停止処分)を受けた(本件支給停止処分)。また、原告らのうちその余の1名(原告X9)は、原告ら8名と同様に、1型糖尿病にり患し、障害等級2級に該当する程度の障害の状態にあるとして障害基礎年金の裁定を受けてこれを受給していたところ、厚労大臣から、支給停止処分を受け、その後、厚労大臣に対し、支給停止の解除の申請をしたが、支給停止を解除しない旨の処分を受けた(本件不解除処分)。本件は、原告らが、いずれも障害等級2級に該当する程度の障害の状態にあるなどとして、本件支給停止処分及び本件不解除処分の取消し等を求める事案である。

 ⑵ 本件の主な争点は、原告らについて、支給停止事由(原告ら8名)又は支給停止解除事由(原告X9)があるか、すなわち、障害等級2級に該当する程度の障害の状態にあるといえるか、である。

2 判断の概要

  裁判所は、概要、以下の理由から、①原告ら8名のうち原告X5については、障害等級2級に該当する程度の障害の状態にあるが、➁その余の原告らについては、障害等級2級に該当する程度の障害の状態にあるとはいえないなどと判断した。

 ⑴ 支給停止処分の要件

  ア 法36条2項本文は、「障害基礎年金は、受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは、その障害の状態に該当しない間、その支給を停止する。」と定めており、厚労大臣は、受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しない間、支給停止処分をしなければならないものであるから、支給停止処分をするためには、一定の時点において、受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しないことを要し、かつこれで足りるものと解するのが相当である。

  イ これに対して、原告らは、支給停止処分は、基準時における受給権者の障害の状態が、当該受給権者が過去に同様の診断書を提出した時点の障害の状態から改善し、その結果、基準時における障害の状態が従前該当するとされていた障害等級に該当しなくなったことを要件とするものと解すべきである旨主張する。しかしながら、障害基礎年金は、障害認定日等の一定の時点において、傷病により障害等級(1級又は2級。以下同じ。)に該当する程度の障害の状態にある者に支給されるものであって(法30条等参照)、障害等級に該当する程度の障害の状態にない者に対して支給することが予定されているものではない。しかるに、原告らの主張によれば、過去に診断書を提出した時点の障害の状態から改善していなければ、たとえ基準時において障害等級に該当する程度の障害の状態にないとしても、支給停止処分をすることができない(障害基礎年金が支給される)ことになって、障害基礎年金に関する法の趣旨に根本的に反することになる。したがって、原告らの上記主張は採用することができない。

 ⑵ 糖尿病による障害が2級に該当する程度の障害の状態に該当するか否かの判断方法

  国民年金・厚生年金保険障害認定基準(障害認定基準)の定めによれば、受給権者の糖尿病による障害が2級に該当する程度の障害の状態に該当するか否かを判断するに当たっては、当該障害が少なくとも3級に該当する程度の障害の状態であることを確認した上で、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況を中心に、その他合併症の有無及びその程度、代謝のコントロール状態、治療及び症状の経過等を総合考慮して、受給権者の身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものであり、換言すれば、必ずしも他人の助けを借りる必要はないものの、独力での日常生活が極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものに当たるか否かを認定判断すべきであるものと解される。もっとも、受給権者が従事し得る労働の内容及び程度には幅があることから、ここにいう「労働により収入を得ることができない」というのは、文字どおり心身が労働に耐えられない場合に限定して解釈することは妥当でない。例えば、就労条件等に特段の配慮がされたことによって労働することができたといえる場合や、病状等に照らして労働を差し控えるのが相当であると考えられるのに就労しているとみられるような場合など、例外的な事情がある場合まで形式的に除外することは相当とは考え難い。

 ⑶ 原告らについての検討

  ア 原告ら8名のうち原告X5については、①意識障害により自己回復ができない重症低血糖の頻度が年20回であり、この症状は、3級に該当する程度の障害の状態と比較してやや重篤であるといい得る。また、➁検査成績は、血糖値が大きくばらついていて血糖コントロールの不良を示し、随時血清Cペプチド値が低く膵β細胞が大きく破壊されていることをうかがわせるものであり、3級に該当する程度の障害の状態と比較して重篤であるといい得る。さらに、③高校卒業後ほとんど就労できたことがなく(そのような経過からすると、就労条件に特段の配慮を受けていたとしても就労することが困難であったと推認される。)。平成28年12月に支給停止処分を受けたことから軽作業の内職を始めたものの、1日に3、4時間程度しか作業をすることができないものである。以上に加え、④前増殖期の糖尿病網膜症(単純期と異なり、レーザー光凝固術や硝子体手術による治療が必要になるところ、原告X5は右目についてレーザー治療を受けた。)、糖尿病性歯周病、バセドウ病及び糖尿病性腎症の合併症があること等の事情をも考慮すると、原告X5の身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状は、独力での日常生活が極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものに当たるものであったものというべきである。そうすると、原告X5の障害の状態が、2級に該当する程度に至っていなかったものとは認められない(支給停止事由があるものとはいえない。)。

  イ その余の原告らについては、前記⑵の判断方法に沿って検討すると、2級に該当する程度の障害の状態にあるとはいえない。

                                        以上

 

第4回口頭弁論以降は、新型コロナの影響による傍聴制限のため、傍聴できませんでした。

第3回口頭弁論

2020年9月9日、大阪地裁において、第3回口頭弁論が行われました。津田弁護士が以下のような弁論を行いました。

【代理人口頭意見陳述要旨】

1 はじめに

  今日ここでは、前回期日後に提出した書面の内、準備書面⑸及びそれに関係する証拠のいくつかについて、説明・紹介をします。

2 準備書面⑸について

  準備書面⑸では、各原告の障害の状態に改善が認められないことを主張しています。まず始めに、今回問題となっている支給停止処分の要件が、過去に支給が認められていた時の障害の状態と、支給停止処分を受けた時の障害の状態とを比較して、症状に改善が認められることが必要であることを述べています。そして、その比較の視点として、改善が認められたと言うためには、生活の質が向上し、日常生活・社会生活への影響が軽減されているかどうかが重要であることなどを指摘しています。また、1型糖尿病の特性を正しく理解してもらうために、一般的な高血糖時及び低血糖時の症状についても、言及しています。その上で、原告ら全員について、障害年金の認定状況及び認定時の診断内容、そして、日常生活における1型糖尿病の症状等から、各原告の障害の状態に改善が認められないことを明らかにしています。ここでは、例として、原告Bの記載について簡単に触れます。原告Bは、1型糖尿病発症から現在に至るまで、常時血糖コントロールが困難な状態であり、予測できない低血糖発作や高血糖状態が毎日のように繰り返されてきました。書面では、原告Bの高血糖時及び低血糖時の症状や頻度などについて触れるとともに、原告Bが、低血糖や高血糖に対処するために、1日に最低4回、血糖値が不安定な時には、1日10回以上のインスリン注射を打つ必要があること、毎食同じ製品を同じ量だけ食べるなど、食事の内容や量を徹底的に管理してきたこと、インスリンでは血糖値がうまく下がらず、何時間も歩行や運動を繰り返すこともあるなど、日々の血糖コントロールの方法や、それでも血糖コントロールがうまくいかないことなどを述べています。また、自分がいくら血糖コントロールを心掛けていても、自分の思い通りにならない血糖値にイライラしたり、気分が落ち込んだりすることが多いことや、家族に心配や介助負担を掛けてしまうことに対する罪悪感などの精神的ストレスについても触れています。また、障害年金の確認届の際に提出した診断書の具体的記載に触れながら、症状に改善が見られないことにも言及しています。例えば、支給が認められていた際の診断書と、支給停止処分を受けた際の診断書の記載に変化がないことや、支給停止処分時の診断書において、以前より症状が改善した旨の記載や、日常生活への影響が軽減されたことを窺わせる記載がないことなどを述べています。結論として、どの原告らについても、1型糖尿病により日常生活に著しい制限を受けていること、及び、病状や日常生活への制限の状況が、支給停止処分を受けた平成28年以前と比べて、何ら改善されていないことを主張しています。

3 関係する証拠について

 ⑴ 日別記録

  準備書面⑸の主張を裏付けるデータとして、原告らには、平成30年11月の1か月間、血糖モニター機器を用いて血糖値を常時モニターし、かつ、血糖値の測定、インスリン注射や補食の日時、各日時における日常行動や身体の状態などを記録してもらいました。裁判所には、この記録を、証拠として提出しています。例えば、原告Bの記録からは、健常者であれば、食前・食後を含めて、ほぼ70~140mg/dLの範囲で維持される血糖値が、1か月ほぼ全ての日において70mg/dLを下回る時間帯があること、血糖値が50mg/dLを下回ることがある日も1か月に13日あったこと、1日の間に、50mg/dLを下回る低血糖と200mg/dLを上回る高血糖を何度も繰り返した日があったことなどがわかります。健常者は、何の意識をしなくても、これほどに血糖値が上下動をすることはありません。このように、どの原告らのデータからも、1型糖尿病を抱える原告らの血糖コントロールがいかに難しく、これに伴う体調不良も含めて、原告らの日常生活に著しい制限が加わっていることが、明らかとなっています。

 ⑵ 動画データ

  また、原告らを代表して、原告Fに、自宅での日々の血糖値測定や低血糖時の症状、インスリン投与の様子などを家庭用ビデオカメラで記録してもらい、動画データとして裁判所に証拠提出をしています。ここではその内、特徴的な場面が記録された3分間程度をご覧いただきたいと思います。 ~~~ 動画再生 ~~~

4 最後に

  今日ここで紹介した準備書面⑸や血糖値データに表れているのは、原告らのある一日、ある一月の生活を切り取ったものに過ぎません。1型糖尿病は、今日の医学では、未だ有効な治療法が存在せず、治療により症状が改善する病気でないことは、これまでの裁判で主張してきたとおりです。そのため、原告らは全員、今回の書面で主張したような一日あるいは一月を、発症以降の数十年間、ずっと続けています。健常者が、日々食事を食べ、トイレに行き、お風呂に入る・・・それと同じような頻度で、原告らは毎日、インスリンを自らの身体に投与し、また、補食を繰り返す必要があります。1日に血糖値測定とインスリン注射を4回行った場合、原告らは、1年間に約3000回も、自らの身体に針を刺していることになります。そして、健常者が日々何気なく行っている日常生活上の行為と、原告らのインスリン投与や補食とで決定的に異なることは、原告らは、それらの行為により、命を繋いでいるということです。その身体的・精神的な負担、日常生活における支障を、裁判官の皆様には、実感を持って認識していただきたいと思います。                          以上

第2回口頭弁論

第2回口頭弁論後の報告集会

2020年1月15日、大阪地裁において、第2回口頭弁論が行われました。伊達山弁護士、松本弁護士が以下のような弁論を行いました。

【口頭弁論要旨】

第1 準備書面(4)に関して

 1 被告は、原告らに対して障害年金の支給停止処分をするまで、原告らの1型糖尿病による障害の状態が「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」に達しているとして、2級に該当すると判断していた。

 2 本件訴訟において、被告は、答弁書第5において、平成28年7月時点の原告らの診断書の記載を根拠として、原告らの障害の状態は、3級に該当する程度であって、2級には該当しないと主張する。そのような被告の主張の前提にあるのは、「そもそも糖尿病患者は、適切に血糖コントロールをすることで、糖尿病に罹患していない者と同様の生活を送ることができる」という見解である。しかし、このような見解は、1型糖尿病についての基本的な理解を著しく欠くものである。

 3 健常者の場合、膵臓から分泌されるインスリンの働きにより血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれ、血糖値が調整されている。これに対し、1型糖尿病の患者は、膵臓からインスリンが分泌されないため、外部から体内にインスリン製剤を投与することによって24時間の血糖値をできるだけ正常血糖値に近づける治療が必要となる。必要なインスリンの量は、食事摂取や運動量はもちろんのこと、ストレス等によっても変化するものであるから、その都度状況に応じて、インスリン製剤の種類や量、投与のタイミングを調整しなければならない。特に、インスリン分泌が枯渇している1型患者は、2型患者に比べ、正常血糖値にコントロールすることは極めて困難である。そのため、原告らは、著しい高血糖と低血糖を繰り返し、突然の意識障害を生じるなどの低血糖発作の危険に常に晒されている。1型患者は、1日のうちに何度も高血糖と低血糖を繰り返しているのであり、「適切な血糖コントロール」などそもそも不可能なのである。

 4 このことは、原告らの診断書の記載からも明らかである。診断書の多くには、「血糖コントロール不能状態」であることや、突然生じる低血糖発作により、一般状態区分表の「オ」(身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲が概ねベッド周辺に限られるもの」の状態に陥ることが記載されている。このような診断書の記載に対し、被告は、意識障害により自己回復ができない重症低血糖の回数が年数回と記載されていることや重症低血糖を起こし一時的に一般状態区分表の「オ」の状態になったとしても、ブドウ糖の摂取やグルカゴン注射をするなどして低血糖の状態を脱することができるなどとして、原告らの状態を、一般状態区分表の「イ」(軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが歩行、軽労働や座業はできるもの)の状態、あるいは「ゥ」(歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの)の状態に該当すると結論付けている。このような被告の主張は、症状に波がある1型患者の障害の状態を判断するにあたり、原告らに低血糖発作がない時の、「できる状況」や「他者による支援が存在すること」を前提としたものであって、「できない状況」や「より支援が必要な状況」に合わせて支援の必要性を判断するという障害者権利条約や障害者基本法の趣旨に反するものである。

 5 以上のとおり、被告は、1型の特性、インスリン治療及び血糖コントロールの実際につき理解を欠くものであるから、原告らは、これらの点につき、準備書面(4)において指摘したものである。原告らは、今後、原告らの障害の状態が従前と何ら変化することなく、2級に該当する程度のままであることについて、過去の病状及び治療の経過を踏まえて主張する予定である。

第2 求釈明申立書に関して

 1 平成29年に確認届を提出した受給権者との取扱いの差異について

 被告は、被告第6準備書面において、「平成29年4月には、日本年金機構で行う障害基礎年金の審査事務が、都道府県ごとの事務センターから障害年金センターへ集約され、認定医や事務局体制が一斉に変更されるという特別な事情があったため、集約後に行われる再認定においては、上記取扱いを前提としつつ、「従前の認定審査のもとでなされた医学的な総合判断」も踏まえて認定審査を行うこととしているところ、原告らは、集約前に再認定や支給停止不解除処分が行われているのであるから、集約後に再認定が行われた「平成29年に確認届を提出した受給権者」とは、そもそも事情が異なる。」と主張する。行政には、その業務について説明責任があり、被告が主張する取扱いの差異は、年金受給権という年金受給権者らの生活の安定にかかわる重要な権利の実質的得喪にかかわるものであることから、その取扱いの差異については、国民年金法の解釈上の根拠を明らかにすることはもとより、憲法第14条に反しない合理的なものであることを説明し、主張・立証する責任を負うものである。このことを踏まえて、次の4点について求釈明する。

 ⑴ 被告の主張によると、「従前の認定審査のもとでなされた医学的な総合判断」を踏まえた認定審査は、「平成29年に確認届を提出した受給権者」においてのみなされ、それ以外の受給権者にはなされていないことを前提としているように思われるが、そのような理解で良いかを明らかにされたい。

 ⑵ 「従前の認定審査のもとでなされた医学的な総合判断」を踏まえた認定審査は、原告らに対するものを含む通常の認定審査と、その手続及び判断方法において何をどのように変更したのかを明らかにされたい。具体的には、①認定医が参照する資料の範囲、➁事務局の関与内容、③年金事業団、厚労省及び同大臣に至る手続並びに判断の在り方、さらに、④これらの差異を生じさせた厚労大臣の指示に至った手続及び指示の内容を明らかにされたい。

 ⑶ 「従前の認定審査のもとでなされた医学的な総合判断」を踏まえた認定審査が、「平成29年に確認届を提出した受給権者」においてのみなされ、それ以外の受給権者にはなされていないのであれば、そのような取扱いを異にする実質的理由は何か及びその国民年金法上の根拠を明らかにされたい。

 ⑷ 「従前の認定審査のもとでなされた医学的な総合判断」を踏まえた認定審査が、「平成29年に確認届を提出した受給権者」においてのみなされ、その理由が、「日本年金機構で行う障害基礎年金の審査事務が、都道府県ごとの事務センターから障害年金センターへ集約され、認定医や事務局体制が一斉に変更されるという特別な事情」があったことであるならば、ア 認定医が変更されていようと変更されてなかろうと、従前の認定審査のもとでも、医学的な総合判断がなされたものと考えられるが、認定医が変更された場合に「従前の認定審査のもとでなされた医学的な総合判断」を踏まえた認定審査を行い、それ以外の場合にはそのような認定審査をしない実質的な理由は何か、イ 事務局体制が変更されたとしても、それが認定審査の内容に影響を与えるものであるとは思われないが、事務局体制が変更された場合に、「従前の認定審査のもとでなされた医学的な総合判断」を踏まえた認定審査を行い、それ以外の場合にはそのような認定審査をしない実質的な理由は何か、について明らかにされたい。

 2 先行訴訟における被告の態度を踏まえると本件処分が権限濫用であることについて

 本件各処分が、著しい権限濫用によるものであるとの原告らの主張に対し、被告は、「被告が、再処分をしない旨の意思を黙示的にも表明した事実はない。」と主張するのみで、原告らの主張の大半について「原告らの意見にすぎないとして」認否すらせずに理由がないと主張する。しかし、原告らの主張は、被告による再処分をしない旨の意思を黙示的に表明したことのみをもって根拠とするものではなく、以下の事実を主張することによって、再処分が著しい権限濫用によるものであることを主張するものである。そこで、被告は、改めて、以下の5つの事実について認否することを求める。

 ⑴ 先行訴訟における平成30年9月12日の口頭弁論期日において、行政手続法上の理由の提示に関する審理を先行することとする旨の訴訟指揮をした際、被告は、裁判所が理由付記の違反の論点のみについて判断して終局判決をする可能性があることを認識した。

 ⑵ 被告は、この期日において、原告Bについて取消訴訟と義務付け訴訟を分離して、取消訴訟のみについて判決する可能性を認識した。

 ⑶ その際、被告は、裁判所が「審理の状況その他の事情を考慮して、第三項各号に定める訴えについてのみ終局判決をすることがより迅速な争訟の解決に資すると認める」と判断する可能性があることを認識していた。

 ⑷ その際、取消判決を受けた場合、厚労大臣において、理由を付記した再処分をすると、原告らにおいて、再処分に対して再度取消訴訟を提起しなければならなくなること、先行訴訟において、実体的理由について判断を受ける機会を失うだけになることを認識していた。

 ⑸ その際、被告において、理由提示義務違反という手続的理由によって取消判決を受けた場合、理由を付加して再処分する予定であることを述べ、理由付記の違法による取消判決をすることは「より迅速な争訟の解決に資する」ことにはならないことを明らかにすることで、再処分に対して再度取消訴訟を提起しなければならなくなることや、先行訴訟において、実体的理由について判断を受ける機会を失うだけになることを避けることができることを認識していた、又は認識できた。

 被告においては、以上5点の事実に対して認否をした上で、これらの事実を認識していたのに、又は認識できたはずであるにもかかわらず、理由提示義務違反の違法のみによる取消判決をすることは「より迅速な争訟解決に資する」ことにはならないとして、異議を述べなかった理由を明らかにされたい。                            以上

次回の裁判は、2020年3月23日15時、大阪地裁大法廷において開かれます。

新型コロナウィルス感染症の影響で延期になりました。

第1回口頭弁論

第1回口頭弁論後の報告集会

2019年10月15日、大阪地裁において、「再」訴訟の第1回口頭弁論が行われました。原告ご本人が意見陳述をされた後、川下弁護団長が以下のような意見陳述を行いました。

【意見要旨】

 原告から意見陳述がありました。被告国・厚労大臣の今回の対応について、「落胆と憤りの気持ちでいっぱい」だということを述べました。訴状では、権利の濫用という法律構成にまとめるしかなかったところですが、そのような法律構成にはまとめきれない原告らの気持ちを述べたものです。しかし、原告らの胸のうちには、この言葉でも言い尽くせない、苦しかった、強く、激しいものがあります。

 前の訴訟において、原告らは、貴裁判所から勝訴判決をいただき、控訴もなく確定しました。ところが、裁判に勝った、再び障害年金の支給が受けられるという喜びもつかのま、説明を補充して再び支給停止の処分をするという通告を受けました。裁判を一からやりなおせというわけです。卑俗ないい方をすれば天国から地獄に突き落される目にあいました。原告らのみなさんは、泣きくずれ、絶望して、裁判なんかするんじゃなかった、もう立ち直れないというお気持ちになった方もあったと伺っています。ご家族のみなさんや支援者のみなさんからの強い励ましと支えがあって、原告ら全員がなんとか立ち直り、再び裁判所にやってくることができました。

 昨年の9月12日、前回訴訟の第3回口頭弁論期日において、裁判長から「行政手続法上の理由の提示に関する審理を先行することとしたい。」との訴訟指揮があり、双方当事者に意見を求められました。この訴訟指揮に異議はないと答えたとき、被告側は、この訴訟指揮による訴訟進行がどのような経過と結果をもたらすのかを予想できました。実体についての審理を止めて争点を手続に絞って審理を進めるという方針は、裁判所において、審理を遂げたうえで、原告1名についての義務付け訴訟を分離して、原告全員について取消訴訟の判決することが争訟の早期解決に資すると判断されようとしていることを当然認識していました。その結果、被告敗訴、原処分を取消すという判決を受ける可能性が高いことも予測できました。原処分の取消判決を受けた場合に、厚労大臣において、説明を補充して再び支給停止処分をすることが国の方針であるのなら、このときに、取消判決だけをすることは、争訟の早期解決に資するものではないとして異議を述べるべきでした。今、この事件の審理は、実質的には、昨年の9月段階、さきほどの訴訟指揮があった時点の審理状態に戻ってやりなおすことになります。原告らは、前の訴訟において、実体についても判断を受ける機会を失い、1年あまりの時間を無駄にしてしまいました。この結果を予測できなかったという弁解の余地はありません。

 裁判で争っているのですから、相手方の主張立証を弾劾するなど勝訴するために全力を尽くすことは当然であり、それが厳しいものであっても、互いに受け容れなければなりません。しかし、その活動には自ずから限度があります。すべての訴訟活動は信義則に則り誠実に行われることが必要です。前の訴訟における先ほど述べたような対応、そして判決後の国の対応が信義則に則った誠実な訴訟活動とは到底言えないことはいうまでもありません。まして、被告は、原告らをこのような目にあわせることになるとわかっていて、このような対応をとったと考えるほかありません。法理論的には、信義則違反、権利の濫用とまとめざるを得ません。しかし、そのような法的構成にはまとめきれない怒りをもって、たとえ裁判の相手方であっても、人をこのような目に合わせることは許されないということを申し上げておきたいと思います。

 本件の答弁書において、被告は、前回訴訟における裁判所の訴訟指揮に対する被告の対応に関する原告の主張を、原告の意見として斥け、認否すらしません。反論もしません。では、いかなる意図でこのような対応をしたのかについて何も説明しようとはしません。原告らの主張が誤っているというのであれば、理由提示の不備で敗訴した場合には、再処分するというのであれば、理由提示に絞る訴訟進行や判決が原告らに再訴の負担をかけるだけに終わることをどのように認識し、考えていたのかについて説明するべきです。行政には、その行政行為について説明責任があります。前述のとおり、この事件の審理は、実質的には、昨年9月段階、さきほどの訴訟指揮があった時点の審理状態に戻ってやりなおすことになります。1年あまりの時間を無駄にさせ、再訴の負担をかけたことからだけでも、どうしてこのようなことになったのか、被告には、説明する責任があると思います。この裁判は、そこから始めなければなりません。

 引き続いて、堀江弁護士が、原告らの家族・支援者・報道陣等で満席になった傍聴席に向かって、パワーポイントを活用して、この「再」訴訟に至った経緯や結論として障害年金を支給すべき理由等について、わかりやすく説明しました。

次回の裁判は、2020年1月15日15時、大阪地裁大法廷において開かれます。

 

「再」訴訟の提起

2019年4月の勝訴判決にもかかわらず、国は原告らに対して、5月中旬に相次いで再度の支給停止処分をしました。原告らに対する改めての現況調査もなにもありませんでした。前のの裁判で理由を示していれば、原告らはこのような負担など負うこともなかったはずで、司法判断軽視の国の姿勢に対し、憤りをもって、2019年7月3日、大阪地裁へ再提訴が行われました。

再処分も違法 6つの理由

1.再処分は取消判決の効力に反する

  • 行政事件訴訟法上、取消判決が確定すれば、同一事情・同一理由・同一内容の再処分は禁止される。
  • 本件再処分は、H28年7月時点の診断書の内容を付け加えただけで、前と全く同じ理由の処分。
  • 理由を補って再処分できるとすると、「とりあえず処分→理由は後付け」を許してしまう。

2.再処分は国の著しい権限濫用である

  • 過去の症状との比較をしていないという、根本的な問題が何も解決されていない。
  • 厚労大臣は、これまでも判決で理由提示義務違反を指摘されながら、無視し続けている。
  • 国は、先行訴訟で裁判所の進行に異議を唱えないことで、再処分しないことを示していた。

3.過去から症状の改善がないのに支給停止

  • 1型糖尿病は、基本的に過去の症状からの改善はない疾患であるし、原告らも改善はない
  • 原告らは、これまでずっと2級に該当していたのだから、現在も2級に該当する。
  • 過去の障害程度と比較して、2級に該当しないと認められない以上、支給停止要件は不充足。

4.不平等な取り扱いの違い

  • 厚労大臣は、H30年7月3日の委員会で、障害状態の改善がなければ支給停止をしない旨の答弁。
  • H29年に確認届を提出した受給権者の多くは支給継続となったのに、原告らは支給されない。
  • 「障害年金センターへの審査事務の集約」の前か後か、という不合理な理由による差別。

5.再処分についても理由付記の不備がある

  • 理由提示義務の趣旨は、行政による恣意的な判断の抑制と不服申し立ての便宜である。
  • 本件再処分も、その理由部分では、過去からの障害状態の変化について全く触れていない
  • 判断過程が不明で、恣意的な判断の抑制になっておらず不服申立ての十分な準備もできない。

6.過去に遡ってまで支給を停止する公益上の必要がない

  • 障害年金は受給者の生活設計に必須であり、その支給を停止することは重大な不利益処分
  • その障害年金を過去に遡ってまで受給をさせなくするからには、相応の理由が必要。
  • 支給を維持しても、それによる不利益は、財政支出にとどまり、重大な不利益は生じない

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ごあいさつ

代表:鈴木 健司

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