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大阪障害年金申請相談オフィス

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発達障害

事例30:最重度自閉症なのに2級→審査請求で1級に変更

 相談支援センターのKさんから次のような相談を受けました。「森田さん(仮名 20代男性) の障害年金の手続きをお母様がされました。森田さんは、重度の自閉症スペクトラムで知的障害もあるのに、2級になりました。不服申立(審査請求)の支援をお願いします。」

 お母様と面談しました。「息子は、言葉は全く理解できません。フライドポテト等の2品目しか口にしません。自分の思い通りにできないとパニックになり、床に頭部を打ちつけ続けたりします。当然1級だと思っていたので、納得できません。」

 2級の原因を確認するために、保有個人情報開示請求によって、「認定調書(認定医の判定理由等が記載されている)」を入手しました。それには、2級の判定理由として「通所可、家族の援助で在宅可」と記入されていました。

 診断書の「日常生活能力の判定、程度」は、全て最重度にチェックされていました。ただ、「作業所に行きだしてから、改善がみられる。家族が対応している限りは一応の生活が送れている」と書かれていました。

 診療所をお母様と一緒に訪問し、G医師と対応策を検討しました。G先生は意見書に「家族のみで24時間介護することが限界となり、生活介護事業所に通所。『作業所に行きだしてから、改善』と記したのは、事業所に適応できず悪化することを非常に危惧していたが、職員の常時援助により最悪の状態が回避でき、ストレス要因の減少により、不適応行動の出現頻度が若干減少した、という意味であり、病状の改善とは言えない。」等と書いてくださいました。  

 さらに、私は審査請求書で「診断書に『常に突発的な行動が出る可能性がある』、『異常な感覚過敏が出現し、食事もこだわりが強く、ほとんど食べられるものがなかった。』と記載されている。にもかかわらず、認定医は、不適応行動や感覚過敏による日常生活の制限について、十分考慮していない。よって、認定医の評価は、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いた恣意的評価である。また、本人はより要件の厳しい特別障害者手当を受給しており、整合性を欠く」等と主張しました。

 その結果、処分が変更され、森田さんは、1級と認定されました。

 このケースで痛感したのは、「常態化」という現象です。一般社会常識で考えれば、大問題であるようなことが、親や治療者にとっては、長年慣れっこになってしまっているために特に問題視しなくなってしまっているのです。 

 森田さんは、自宅では、真冬でもパンツ一丁で過ごしています。皮膚感覚過敏で着衣が苦痛なため、帰宅すると、まず服を全部脱ぎ捨てるのです。私は、非常に驚きましたが、親にとっては、「これくらいのことは大したことではない。真冬に裸でも死なない。」とのことでした。ですから、診断書や病歴等申立書にも書かれていませんでした。

 G先生は、「重度の障害者でも親や治療者は少しでも状態が改善することを願っているので、極めて僅かな改善が短期間みられても、つい『改善』と書きたくなってしまう。」とおっしゃいました。

 障害年金の認定医は、このような親や治療者の心情を汲むことなく、「いいとこどり」の判定を行った、と言わざるを得ません。書面審査の問題点を示しています。ですから、親や治療者は、本人の生きづらさをリアルに診断書や病歴等申立書に書き尽くす心構えが大切です。

 J市保健センターの相談員から次のような相談を受けました。「白井さん(仮名 40代男性)は、自閉症ですが、一人暮らしで就労継続支援A型(以下「就A」と言う)に通所して月 十万弱の収入があります。障害等級に該当しない、と不支給になるのでは、と心配です。支援をお願いします。」

 白井さん宅を相談員と一緒に訪問し、事情を伺いました。両親が他界され、妹さんは障害者施設に入所されているため、持ち家で一人暮らしをされています。就Aには、保健センターに勧められ通所されています。しかし、こだわりが強くコミュニケーションが苦手なため、就Aでも孤立し、帰宅後や休日は疲れ果て何もできないので、近所の親戚に家事全般を手伝ってもらっています。このような生きづらさを、リアルに主治医に伝えることもできません。

 私は何回も訪問して、出生時からのしんどさをヒアリングさせて頂きました。白井さんは、幼い頃、シールに熱中し何百枚も集めたこと、音や臭いに過敏なこと、他人が嫌がることを素直に言ってしまい叱られたこと、などを思い出しては話して下さいました。

 白井さんが、最も苦労されているのは、耳からの音声情報の理解が困難で、例えば、雑音と指示とを聞き分けられない、ことです。そのため、電話では話が通じませんし、上司の指示を聞き取れないので、就労しても長続きしません。白井さんは、おとなしく優しい性格で、いじめられても、じっとガマンしますが、限界を超えると一気に爆発し、いすを蹴飛ばして退社し、そのまま会社を辞めてしまいました。

 診断書の「現症時の就労状況」に、仕事の頻度・給与額しか書かない医師が少なくありません。しかし、それだけでは、「日常生活能力が向上した」と看做され、不支給となるおそれがあります。そこで、仕事の内容や、仕事場での援助の状況等を医師に詳しく記入して頂くことが大切です。

 私は、白井さんの承諾を得て、就Aを訪問し職員と面談させて頂きました。職員のXさんは、コトバではなく、絵を描いて作業指示をされています。白井さんは、出来ばえを何回も確認しないと気が済まないため、流れ作業ではなく、ひとりで仕上げる作業を任されています。

 このような、きめ細やかな支持的配慮を、主治医にお伝えし、診断書に詳しく記入して頂くことができました。その結果、白井さんは障害基礎年金2級を受給することができました。

 後日、白井さんは苦手な電話で、「就Aの工賃だけでは足りなかったけど、これでちょっとは余裕ができる。いつも、のり弁ばっかりやったけど、唐揚げ弁当食べられるわ!」とうれしそうに報告してくださいました。

 高松さん(仮名 40代男性)の妻の尚子さんから次のような相談を受けました。「夫は自閉症で仕事が長続きせず転職を繰り返し、うつ病も併発したため退職しました。初診は15年以上前で、しかも遠方です。支援をお願いします。」

 高松さんは、小学生の時から先生に叱られることが多く、本人には悪気はないが他人が嫌がることをしてしまうため、仲間はずれにされていました。高卒後、就職しましたが、困難に直面します。マニュアル通りにしかできない。相手のコトバ通りにとってしまう(上司は、在庫数確認のつもりで、「在庫、見てきて」と指示したのに、本人は、いつまでもじっと在庫を見つめ続けていた)。行間や空気を読めず、職場で孤立してしまいます。

 平成16年11月、上司にすすめられ、東京の佐藤クリニック(仮名)を初めて受診し、「うつ状態」と診断されました。休職後、復職したのは別の勤務地だったため、佐藤クリニックには通院できなくなりました。新職場にも馴染むことができず、うつ状態が再燃し、平成19年7月、2番目のA医院を受診しました。休職後退職しました。退職に伴い、故郷の関西に帰り、A医院からの紹介状により3番目のB医院に転医しました。その後、C医院に転医し現在も通院中です。C医師は、「自閉症スペクトラムが原因で対人関係を構築できず、そのため自己肯定感が低下、慢性的な抑うつ気分」と診断されました。

 障害年金を請求するためには、まず、初診日を証明しなければなりません(受診状況等証明書「受証」)。私は、初診の東京の佐藤クリニックに確認しましたが、16年前のため、カルテは廃棄されていました。2番目のA医院のカルテも廃棄され、レセプトコンピューターのデータしか保存されていなかったので、初診・終診年月日しか判りませんでした。そこで、3番目のB医院を訪問したところ、2番目のA医院からの紹介状(H22年3月31日付)が保管されていました。その紹介状には、次のように書かれていました。「H16.11月、うつ初発。東京の某メンタル通院。H19.7/23 うつ状態再燃で、本院初診。」

 「東京の某メンタル」とは、佐藤クリニックのことですが、残念ながら、「某メンタル」としか書かれていませんでした。

 厚労省は、初診日証明が取れない場合の取扱いについて通知を発出しています(平成27年9月28日 年管管発0928第6号)。その通知には、以下の記述があります。「請求の5年以上前に医療機関が作成した資料(診療録等)に請求者申立ての初診日が記載されている場合には、初診日と認めることができる」。

 障害年金を請求したのは令和2年2月で、A医院の紹介状の作成日付は平成22年3月31日ですから、「請求の5年以上前に医療機関が作成した資料」に該当します。その資料に、「H16.11月、うつ初発。東京の某メンタル通院。」という「請求者申立ての初診日が記載されている」のですから、初診日と認定されるべきです。

 私は、「受診状況等証明書が添付できない申立書」に上記の趣旨の申立書を添付して、裁定請求を行いました。その結果、同日(厚生年金加入)が初診日と認定され、高松さんは、障害厚生年金2級を受給することができました。 

 橋田さん(仮名 30歳台男性)は、4年前に「パニック障害」で本人請求されましたが、不支給になっていました。しかし、病状は改善せず、引きこもりの状態で就労することはできないため、再請求の支援を希望されました。

 「障害認定基準」は、「神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。」と規定しています。パニック障害は神経症の一種なので、それが不支給の原因と考えられます。

 橋田さんは、16年前に初めて精神科を受診しパニック障害と診断され薬物療法を受け続け、いくつもの精神科の転医を繰返しましたが、一向に病状は改善しませんでした。そこで、1年半前に、知人の紹介で発達障害に詳しい前園医院(仮名)を受診することになりました。

 前園医師は、橋田さんの幼い頃からの生きづらさを詳しく聞いて、心理テスト(WAISーⅢ)を勧められました。受検の結果IQ70台で、前園医師は「知的障害」の診断書を書いてくださいました。橋田さんは診断書と心理テスト結果を持参して相談に来られました。

 「障害認定基準」は、「知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。」と規定しています。とはいえ、知能指数にも着眼されるので、IQ70超では、2級該当性は低いのではないかと危惧しました(橋田さんは国民年金加入なので)。そこで、検査結果を拝見した所、言語理解と知覚統合とに著しいギャップがあり、「発達障害」の特徴が現れていました。

 後日、前園医院を訪問し、IQ70超では知的障害で2級は困難であることをご説明し、前園医師に相談しました。すると、前園医師は「橋田さんの生きづらさの主たる要因は、自閉症スペクトラムである」という趣旨の説明をしてくださいました。そして、「自閉症スペクトラム、知的障害」で診断書を修正してくださいました。

 その結果、橋田さんは無事に、障害基礎年金2級を受給することができました。 

 堀北さん(仮名 40歳台女性)は、電話で以下のような相談をされました。「うつ病で障害年金を請求しようと思い、当時の病院に初診日を教えてもらったのですが、市役所で確認したら、『保険料納付要件を充たしていない』と言われました。どうしたらよいでしょうか。」

 初回面談に、車を運転して来られたこともあり、「うつ病は重くないのでは」というのが第一印象でした。事前に「参考になりそうな書類はなるべく持ってきてください。」とお願いした所、どっさりと書類を出されました。承諾を得て拝見すると、療育手帳B2(知的障害の障害者手帳)を所持しておられました。また、心理テスト(WAIS‐Ⅲ)の検査結果もありました。全IQ58ですが、知覚統合と作動記憶とに著しいギャップがあり、発達障害の傾向を示唆していました。

 そこで、ご本人の承諾を得て、主治医の外山先生(仮名)と面談させて頂きました。外山先生は「堀北さんは、知的障害は中等度ですが、自閉症スペクトラムの症状が顕著です。自分本位に行動し、率直すぎる発言のために対人関係を壊してしまうため、社会生活に適応できず、抑うつ状態になっています。」という趣旨の説明をしてくださいました。

 知的障害の初診日は出生日とされています。また、厚労省は「知的障害(軽度)と発達障害を併発している場合は同一疾病として扱う」との通達を発出しています。堀北さんのケースは、これに該当するので、初診日は出生日となり、20歳前障害なので、保険料納付要件は不問となります。

 その結果、堀北さんは、障害基礎年金2級を受給することができました。

 

➢知的障害と発達障害の併発等、精神疾患が混在する場合の取扱いについてはここをクリック

 池田さん(仮名 30歳台男性)のお父様から以下のような相談を受けました。「2年前に『強迫性障害』で請求したが、不支給でした。不支給決定通知書に『障害の状態は、障害年金1級、2級又は3級の対象となる障害に該当しません。』と記載されていました。しかし、息子は引きこもりでヘルパーの介護がなければ、入浴もできない状態です。再請求の支援をお願いします。」

 障害認定基準には、「神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。」と記載されています。「強迫性障害」は神経症の一種ですので、それが原因で不支給になった、と思われます。

 ご自宅を訪問し、ご本人と面談させて頂きました。池田さんは、「毎朝、歯磨き・洗面を20ゕ条のマイルールで行なう。途中で邪魔が入った時は、最初からやり直さないと気がすまない。」などと強迫行為について丁寧に説明して下さいました。さらに、幼い頃のつらかったことを質問した所、「幼稚園の時から、仲間外れやいじめられた。特定の音が怖く、臭いが嫌だった。痛いので、肌着のタグを全部切っていた。」と教えて下さいました。このような、行う順序や特殊な決まったやり方への固執や感覚の過敏性といった特徴は、発達障害の可能性を示唆しています。

 ご本人・ご両親の承諾を得て、主治医の紙野先生(仮名)と面談させて頂きました。「池田さんは、他医で『強迫性障害』と診断されましたが、症状が持続する為に転医を繰り返した後、本院を受診されました。生育歴・生活歴、心理テスト(WAIS-R)の結果から、『広汎性発達障害』と診断を変更しました。」と、紙野先生は教えて下さいました。

 強迫性障害は、几帳面で真面目な人がなりやすいと言われています。広汎性発達障害の当事者は自分なりのこだわりを曲げることが出来ないという特徴があります。広汎性発達障害の自分の決まりごとを守るという非常に真面目な個性が原因で、強迫性障害という二次的障害を発症してしまう、と考えられています。

 紙野先生の「広汎性発達障害」の診断書と、出生時からの「病歴・就労状況等申立書」を提出しました。その結果、池田さんは、障害厚生年金2級を受給されました。

事例18 感覚過敏・妄想癖→自閉症で2級受給

 中田さん(仮名 40代女性)は、幼い頃から感覚過敏があり、硬いものを口にいれるのが嫌でおかゆしか食べることができませんでした。皮膚感覚も過敏で、同じ素材の服しか着られません。また、コミュニケーションが苦手で、「話の腰を折る。うざい。」と仲間はずれやいじめに遭いました。

 成人後には、「盗聴されている」「悪口を言われている」等の被害的な妄想が出現しました。夫の勧めで精神科を受診し、心理テストWAIS-Ⅲを受検した結果、「自閉症スペクトラム」と診断されました。

 自閉症スペクトラムのある人には、妄想が現れる傾向があると言われています。コミュニケーションの障害のために疑心暗鬼になりやすいことや、「空気を読む」ことが難しいため自分がうまくコミュニケーションを取れているのか自信が持てないことなどが、妄想の原因になる、と言われています。

 幼い頃からの、生きづらさをヒアリングして作成した「病歴・就労状況等申立書」等を提出し、中田さんは障害基礎年金2級を受給されました。

 中田さんは「ひきこもりにならないように『居場所』を見つけたい」と述べておられます。

事例27:うつ病で不支給→自閉症で再請求、2級受給

 H精神科病院デイケアの精神保健福祉士(PSW)のAさんから次のような相談を受けました。「近本さん(仮名 40代男性)の障害年金請求をサポートしましたが、不支給でした。受給している他のデイケア利用者よりも病状が重いのに なぜでしょうか?」

 不支給原因を調べるために、厚労大臣宛保有個人情報開示請求によって、「障害状態認定調書」等を入手しました。その書類には、不支給と判定した理由として、「ADL(日常生活能力)が保たれ軽症」と書かれていました。診断書裏面の「日常生活能力の判定・程度」のチェックが「軽症」と判定されたことが主な原因、と考えられます。

 また、近本さんは、自閉症スペクトラムですが、診断書の傷病名は「うつ病」としか書かれていませんでした。その理由を主治医のB先生に伺うと、「『発達障害』では、障害年金は難しいのでは?」と懸念されてのこと、とわかりました。さらに、近本さんは、B先生の問診に対して、「はい/いいえ」等と表層的に応答するのが精一杯で、日常の生きづらさを上手く伝えることができていませんでした。

 そこで、近本さんに幼少期からのしんどかったことや、PSWのAさんに近本さんのデイケアでの様子をヒアリングさせて頂き、「病歴・就労状況等申立書」とオリジナルの「日常生活状況票」を作成し、B先生にお伝えしました。

 近本さんの生きづらさは、自閉症スペクトラムに由来するもので、その二次障害として、うつ病を合併しておられます。B先生は、再請求の診断書には、傷病名:「自閉症スペクトラム、うつ病」と記入され、「障害の状態」欄にも、自閉症スペクトラムについての状態像を具体的に記入してくださいました。

 その結果、近本さんは再請求では無事に、障害基礎年金2級を受給することができました。 

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