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大阪障害年金申請相談オフィス

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差引認定

認定基準

⑴ 障害認定の対象とならない障害(以下「前発障害」という。)と同一部位に新たな障害(以下「後発障害」という。)が加わった場合は、現在の障害の程度から前発障害の障害の程度を差し引いて認定する。

⑵ 同一部位とは、障害のある箇所が同一であるもの(上肢又は下肢については、それぞれ1個の上肢又は下肢)のほか、その箇所が同一でなくても眼又は耳のような相対性器官については、両側の器官をもって同一部位とする。

⑶ 「はじめて2級による年金」に該当する場合には、適用しない。

1 現在の障害の状態の活動能力減退率から前発障害の前発障害差引活動能力減退率を差し引いた残りの活動能力減退率(以下「差引残存率」という。)に応じて、差引結果認定表により認定する。

2 後発障害の障害の状態が、併合判定参考表に明示されている場合、その活動能力減退率が差引残存率より大であるときは、その明示されている後発障害の障害の状態の活動能力減退率により認定する。

別表3 現在の活動能力減退率及び前発障害の活動能力減退率

併合判定参考表(別表1)現在の活動能力減退率(%)前発障害の活動能力減退率(%)
1号区分1~9     134       95
区分10~13     119
     2号     105       84
     3号      92       74
     4号      79       63
     5号      73       44
     6号      67       40
     7号      56       34
     8号      45       18
     9号      35       14
    10号      27       11
    11号      20        8
    12号      14        6
    13号       9        4

 

別表4 差引結果認定表

    差引残存率         障害の程度
  100%以上      1級 9号・11号
   99%~70%      2級 15号・17号
   69%~42%      3級 12号
   41%~24%       障害手当金

 

大阪高裁令和4年1月27日判決(確定) (令和3年(行コ)第29号 障害厚生年金不支給処分取消等請求控訴事件)

<事実の概要>

 先天性の白内障等により障害基礎年金を受給していた原告は、平成25年12月17日、右眼白内障手術を受けた後、本件傷病を発症し、本件傷病により失明したと主張して、国年法30条1項及び厚年法47条1項に基づき、本件手術の日を初診日とする障害給付の支給の裁定請求をしたところ、平成28年2月1日、障害給付を支給しない旨の処分を受けた。本件は、原告が、主位的に、本件傷病により障害等級1級に該当する程度の障害の状態に至ったと主張して、本件各処分の取消し及び本件裁定請求につき障害認定日の翌月である平成27年7月を支給開始月とする障害等級1級の障害給付を支給する旨の裁定の義務付けを求める事案である。

第1審判決(大阪地判令和3年2月10日)は、「原告の現在の障害の状態は、障害認定基準の併合判定参考表の「両眼が失明したもの」(1級1号-1)に区分されるから、活動能力減退率は、134%となる。また、本件傷病を発症するまでは原告の右眼には視力があり、裸眼で0.02程度であったから、本件前発傷病による障害の状態は、障害認定基準の併合判定参考表の「両眼の視力の和が0・04以下のもの」(1級1号-10)に区分され、本件前発傷病による障害の活動能力減退率は95%となる。よって、現在の障害の程度から本件前発傷病による障害の程度を差し引くと、差引残存率は39%となる。次に、本件傷病のみの障害の程度を判断すると、本件傷病において、原告は、右眼が網膜剥離等により失明に至っており、本件傷病と関わりのない左眼の状態は考慮しないから、障害認定基準の併合判定参考表の「一眼の視力が0.02以下に減じたもの」に該当し、失明状態に対する医療効果は期待し得ないことから「治った場合」に該当する。そうすると、本件傷病のみの障害の程度は、障害認定基準の併合判定参考表の障害手当金(治ったもの)の8号ー1に該当する。その結果、活動能力減退率は、「現在の活動能力減退率」の45%となる。前記の差引残存率と本件傷病による活動能力減退率を比較すると、後者の方が大きいため、差引認定基準2により、本件傷病の障害による活動能力減退率(45%)により認定することとなる。そうすると、本件傷病による障害の程度は、本件改正前基準の差引結果認定表により、厚年法施行令別表第2に規定する障害手当金相当となる(別紙Bー1、「50%~24%(治ったもの)」)。」等の理由で、本件傷病による原告の障害の状態は、厚年法施行令別表第1の障害等級3級に該当する程度である、等と判示した。

<判旨>

 「被控訴人(国)は、一眼が失明し、他眼に新たな障害が生じていない場合、「両眼の視力の和」は、後発障害の程度を導き出すために、現在の障害の状態を評価する限りにおいて考慮されるとした上、後発障害による障害の程度を判断するに際しては、後発障害と関わりのない方の眼の状態を考慮すべきではないと主張する。しかしながら、併合判定参考表はもとより、障害認定基準にも、被控訴人が主張するような限定を付すべき根拠となる記載はないし、このような限定を加えて障害認定基準を解釈する合理性も見出し難い。かえって、このような限定解釈は、以下の事例と比較して、少なくともこれを控訴人に適用する限り、不合理であるといわざるを得ない。

【事例①】右眼と左眼の視力がいずれも0.02で障害基礎年金(1級)を受給していた者が、勤務中の事故により両眼を失明した場合

【事例➁】右眼と左眼の視力がいずれも0.02で障害基礎年金(1級)を受給していた者が、勤務中の事故により右眼のみを失明した場合

 控訴人は、前発障害により事例①➁と同じ障害給付(1級の障害基礎年金)を受給していたところ、事例➁と同様に、後発障害により右眼を失明したものであるが、事例➁と異なって、前発障害により左眼も失明していたことから、後発障害が加わった結果、事例①と同様に、両眼の失明に至ったものである。事例➁の場合、現在の障害の状態でも、左眼の視力が残存していることから、事例①との間で、後発障害が加わった後の認定に差が生じることは必ずしも不合理であるとはいえない。しかし、一方の眼を失明した者にとって、他方の眼の役割は両眼の役割に匹敵するものともいえ、そのような者が他方の眼を失明することによる障害の程度は、両眼を同時に失明する場合と大きな違いがあるとはいえないから、事例①と同様に両眼の失明に至った控訴人について、事例➁と同様に厚年法施行令別表第1の3級の障害給付しか受けられないとするのは、「現在の障害の状態」に相当する等級と比べて著しく低くなり、不合理である。

 そして、併合判定参考表1級1号の欄には、「両眼が失明したもの」(1号-1)と「両眼の視力の和が0.04以下のもの」(1号-10)とが列記されているところ、前者につき、両眼の視力を同時に喪失することを要件とすると解しつつ、後者につき、両眼の視力が同時に減退することを要件としないと解することは、著しく均衡を失するから、後者について、両眼の視力が同時に減退することを要件とする旨の記載がない以上、前者についても、両眼の視力を同時に喪失することを要件としないと解するのが相当である。

 以上の諸点を踏まえると、控訴人は、両側の器官をもって同一部位とされる眼について、本件前発傷病により両眼の視力の和が0.04以下であったところ、本件傷病により右眼の失明という新たな障害が加わった結果、両眼の視力を失うに至ったものであるから、差引認定基準2の適用上、後発障害である本件傷病による障害の状態は、併合判定参考表の「両眼が失明したもの」(1級1号-1)に相当するというべきである。その結果、後発障害による活動能力減退率は134%となる。

 このように解しても、障害認定基準において、眼や耳のような相対性器官については、両側の器官をもって同一部位とするとされているから、その限りで、相対性器官ではない、その余の器官の障害と別異に取り扱うこととなるのは当然である。また、障害認定基準によれば、後発障害による「障害の状態」が併合判定参考表に明示され、かつ、その活動能力減退率が差引残存率より大であるときは、その後発障害による「障害の状態」の活動能力減退率により認定することとされているから(差引認定基準2)、その限りで、差引認定基準1によらないことも当然であり、このことは、差引認定の手法自体を否定するものではない。したがって、上記の結論について、公平性の点から問題があるとする被控訴人の主張を採用することはできない。本件傷病による活動能力減退率の方が大きいため、差引認定基準2により、本件傷病による障害の状態である活動能力減退率(134%)によって認定することとなる。

 よって、本件傷病による控訴人の障害の状態は、国年法施行令別表の障害等級1級に該当する程度であると認められる。」

<解説>

 2022年2月16日、関西障害年金研究会(弁護士・社会保険労務士)に原告・控訴人のXさんがオンライン参加、本件について報告され、拡散を希望されましたので、本HPでも紹介させて頂きます。

 第1審判決は、「本件傷病のみの障害の程度の判断においては、本件傷病と関わりのない左眼の状態は考慮しないから、『一眼の視力が0.02以下に減じたもの』に該当する。本件傷病による原告の障害の状態は、障害等級3級に該当する程度である。」旨判示しました。

 Xさんは、「『関わりのない左眼は考慮しない』と言うが、左眼がすでに失明していた私にとっては、0.02しかない右眼が、実際の世界を視るためのかけがえのない『光』でした。手術によってそれさえも奪われ、まさに『真っ暗』になった絶望感がわかりますか。」と訴えられました。

 これを受け、控訴審判決は、「被控訴人(国)は、後発障害と関わりのない方の眼の状態を考慮すべきではないと主張する。しかしながら、このような限定解釈は、少なくともこれを控訴人に適用する限り、不合理である。一方の眼を失明した者にとって、他方の眼の役割は両眼の役割に匹敵するものともいえ、そのような者が他方の眼を失明することによる障害の程度は、両眼を同時に失明する場合と大きな違いがあるとはいえない。障害認定基準の併合判定参考表の『両眼が失明したもの』とは、両眼の視力を同時に喪失することを要件としないと解するのが相当である。よって、本件傷病による控訴人の障害の状態は、障害等級1級に該当する程度であると認められる。」旨判示しました。

 被控訴人(国)は、上告を断念したため、控訴審判決は確定しました。Xさんは、「できるだけ多くの方に判決内容を知ってほしい。」と報告を結ばれました。

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