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大阪障害年金申請相談オフィス

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知的障害

事例31:重度知的障害なのに2級→審査請求で1級に変更

 Aさんから次のような相談を受けました。「息子のBは、重度知的障害で療育手帳Aを持っており、自閉症スペクトラムもあります。20歳になったので、障害年金を請求しましたが、2級と判定されました。特別支援学校の同じ程度の障害の同級生はみんな1級だったのに、なぜでしょうか。不服申立をしたいです。」

 診断書の「日常生活能力の判定」は全て「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」、「日常生活能力の程度」は知的障害の(5)にチェックされており、「等級目安」上は1級に該当します。

 2級と判定された原因を確認するために、保有個人情報開示請求により、障害状態「認定調書」を入手しました。「認定調書」の「認定医の等級判定理由」欄には、「DQ値」としか記入されていませんでした。DQ値とは、発達指数のことで、発達検査の結果値です(ちなみに、IQは知能指数)。診断書の「障害の状態」欄に、「新版K式発達検査 全検査DQ34」と記載されています。

 厚労省は、知的障害の程度について、「IQ(知能指数)Ⅰ:20以下を最重度、Ⅱ:21~35を重度、Ⅲ:36~50を中度、Ⅳ:51~70を軽度」と定義しています。

 認定医の思惑は、(DQをIQと同視して)「DQ34は、最重度ではないから、1級ではない」というものと推察されます。

 ガイドラインは、「目安と異なる等級になることもあり得るが、その場合は、合理的かつ明確な理由をもって判定する。」としています。そこで、「DQ34は、最重度ではないから、1級ではない」という理由が、合理的かつ明確と言えるかが、本件の争点です。

 障害認定基準は、知的障害1級とは、「知的障害があり、食事や身のわまりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの」としています。「最重度でなければ1級ではない」とは書かれていませんし、どこにも、IQ(知能指数)やDQ(発達指数)の数値を示していません。

 C公立病院の主治医のD先生は、次のような意見書を書いてくださいました。「知的障害とは、知的機能の欠陥と適応機能の明らかな欠陥が発達期に生じるものである。知的機能は知能検査によって測られ知能指数(IQ)で示される。しかし、適応機能は知能検査によって測ることはできず知能指数(IQ)で示すことはできない。よって、知能指数の値だけでは、知的障害の程度を判断することはできず、適応機能も総合的に評価し、判断するべきである。また、重度と最重度との違いは適応機能の違いにのみ基づくものである。現存の知能テストでは0.003パーセンタイル以下の知的機能の差を信頼性と妥当性を担保して測定することができないからである。また、新K式DQ(発達指数)がWISCーⅣIQよりも高く算出されやすいことが指摘されている。新K式とWISC-Ⅳは異なる背景を持つ検査であり、縦断的な評価には慎重を期す必要がある。認定医の見解は、IQとDQの違いも考慮せず、DQ値だけで知的障害の程度を判定するものであり、合理性はない。」

 ガイドラインは、「障害の程度の認定については、『障害等級の目安』を参考としつつ、『総合評価の際に考慮すべき要素の例』で例示する様々な要素を考慮したうえで、認定医が専門的な判断に基づき、総合的に判定する。」としており、66項目の考慮すべき要素を例示しています。

 認定調書の「特に考慮した事項の番号」欄には、「8」と記載されています。「考慮すべき要素の例一覧」の「8」は、「知能指数を考慮する。ただし、知能指数のみに着眼することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度を考慮する。」です。

 診断書には、「日常生活は常時全面的に要介助である」、「日中は生活介護職員の、夜間は両親の常時援助が必要。」などと記載されています。

 にもかかわらず、認定医が、「DQ値」のみに着眼して、以上のように診断書に明示された日常生活の様々な場面における援助の必要度を考慮することなく、目安と異なる等級である2級と判定したことは、保険者自らが定めたガイドラインに定められた「知能指数のみに着眼することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度を考慮する。」に反していることが明白である、と審査請求書(不服申立)において主張しました。

 その結果、原処分が取り消され、1級に変更されました。

 障害者相談支援センターの精神保健福祉士から以下のような相談を受けました。     「紙山さん(仮名 40歳台女性)を支援して2年前に「うつ病」で障害年金の請求をしましたが、不支給になってしまいました。しかし、その後も症状は改善しないので、ご本人が再請求を希望されました。ところが、主治医は『前回の診断書でなぜ不支給になったのか、原因が分からないので』、と躊躇されています。再請求の支援をお願いします。」

 そこでまず、不支給の原因を探るために、日本年金機構に対して、「障害状態認定調書(不支給の理由が記載された書類)」の保有個人情報開示請求を行いました。届いた障害状態認定調書には、不支給の理由として、「抑うつ状態による日常生活に著しい制限が認められない」と書かれていました。そのことを主治医の浜田先生(仮名)に報告し、再請求について相談しました。

 すると、浜田先生は、「実は、紙山さんは以前から『物事の状況や意味が分からないことが多く、買い物時に代金の計算ができない』と訴えておられて、知的障害の傾向があります。」と教えて下さいました。その後、紙山さんは心理テスト(WAISⅢ)を受検され、その結果IQ40台でした。

 浜田先生は、「紙山さんは知的障害のために、家事・育児をどうしたらよいかわからず対応に困り、それに起因して、抑うつ状態が発症した、と考えられます。紙山さんの生きづらさは知的障害に由来するものです。」と説明して下さいました。

 そこで、「知的障害」で再請求することになりました。知的障害は先天性なので、「病歴・就労状況等申立書」は、出生日に遡って記入しなければなりません。私は、何回もご自宅を訪問して聴き取りました。紙山さんは、時折、涙を流しながら、幼い頃からのしんどかったことを話して下さいました。こうして出来上がった申立書も参考にして、浜田先生は診断書を作成して下さいました。

 その結果、紙山さんは無事に、障害基礎年金2級を受給することができました。

事例24:普通学級卒・療育手帳B2で2級永久認定

(写真は本文とは関係ありません)

 吉井さん(仮名 30代男性)のお父様から「親亡き後が心配です。一時期働けていても、もらえるのでしょうか」と相談されました。

 高校普通科を卒業後、アルバイトをしても長続きせず、精神科を受診、心理テストの結果、IQ53で療育手帳B2を取得しておられます。

 ご両親同伴で、ご本人と面談しました。礼儀正しく素直だが幼稚、という第一印象でした。コロナ禍なのに、質問するとその都度、マスクを外して答えようとされます。ヒアリングにより、吉井さんの生きづらさが浮き彫りになりました。「消費税の計算ができず、レジで不足することが多い。方角が分からず、地図・駅券売機の路線図を読めず、初めての場所にはひとりでは行けない。難しい漢字は読めない、音読できたとしても意味は理解できず、各種手続きをひとりではできない。知人にお金を騙し取られたり、安物を高額で売りつけられる。複雑な会話は理解できず、相づちを打ってごまかす。幼児向けTVアニメを楽しみに観ており、医師に『精神年齢は10歳程度』と言われる。アルバイトをしても、仕事内容が理解できず混乱し、長続きしない。自信喪失し、他人や仕事を怖がるようになり、ひきこもる」

 「病歴・就労状況等申立書」を作成し、医師はそれも参考にして診断書を作成して下さいました。診断書の日常生活能力のチェックは、判定平均2.8点、程度3で、ガイドラインの障害等級の目安にあてはめると「2級又は3級」です。「微妙やなぁ」と気を揉みました。

 3ゕ月後、お父様から「2級で永久認定でした」と電話を受けた時は、正直、驚きました。従来は、「IQ40代、療育手帳B1」で2級と認定されても、更新は1年後、というケースが多かったからです。

 令和2年10月、再認定(更新)についての一部改正の通達が発出され、「更新期間の設定方法等の改善」が謳われていました。吉井さんのケースは、この通達の趣旨に則って運用された認定実務によるもの、と感じます。 

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