運営:鈴木健司社労士・精神保健福祉士事務所

大阪障害年金申請相談オフィス

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うつ病

 梅林さん(仮名 30歳台女性)は、うつ病で障害厚生年金2級を受給していました。ところが、更新時に診断書(障害状態確認届)を提出した所、支給額変更処分により3級になってしまいました。梅林さんは、意外な結果にとても驚きました。というのも、長年通院し信頼していた近松医師(仮名)が病気のため廃院されたことがショックでふさぎ込み病状が悪化してしまったと感じていたからです。国によって、自分の病状が軽くなったと判断されたことに納得できず、当事務所に不服申立(審査請求)の相談に来られました。

 更新時の診断書の病状や日常生活能力等についての記載内容は、前回の診断書とほぼ同じでした。唯一の相違点は、更新時の診断書の「現症時の就労状況」欄に「勤続年数1年6ヶ月、月に4日、給与25,000円程度、店員」と記載されたことです。3級への変更処分の原因を確かめるために、保有個人情報開示請求を行い「障害状態認定調書」を取寄せました。その調書の「前回認定に比べ下位等級と判定した理由」欄に「1.通院、2.就労中」と記載されていました。このことから、3級への変更処分の原因は、もっぱら梅林さんが「就労中」であるという一事に尽きると推察しました。

 ところが実際には、梅林さんの病状が改善し労働意欲が湧いてきたから就労を始めた訳ではありませんでした。事実はまったくその逆で、信頼していた近松医師が病気のために廃院になってしまったことの喪失感が原因で病状が悪化してしまったのです。梅林さんは「自分には価値がなく生きていても夫たちに迷惑をかけるだけだ。このようなことなら死んでしまったほうがよい」という思いに常に苛まれるようになってしまったのです。このような究極の自己否定の恐怖に対する本能的な自己防衛反応として、「こんな自分でも仕事ができる。それを自分で確かめたい。それを夫にもわかって欲しい。」という切実な自己の存在意義の確認のためにコンビニでアルバイトを始めたのでした。

 就労について、処分庁は通達を発出しています。厚労省・年金機構の「障害年金の診断書記載要領」には、「就労している事実だけで、障害年金の支給決定が判断されることはありません。」と明記されています。「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」には、「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する。」と記載されています。

 障害年金や生活保護等の社会保障の給付行政には、処分庁に裁量権があります。しかし、フリーハンドではありません。「重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いた処分は、裁量権の逸脱又は濫用として違法となる」(最高裁平成18年2月7日第三小法廷判決 民集60巻2号401頁参照)場合があります。

 そこで、私は代理人として、審査請求(不服申立)を行い、ガイドラインが列挙する考慮要素について、事実を具体的に主張すると共に、主治医に意見書を書いて頂きました。そのための準備として、ご本人・夫から聴取し、ご本人の許可を得てアルバイト先のコンビニを訪問し、店長・同僚から詳しく事情を聴取させて頂きました。

 その結果、3級への額変更処分は取り消され、2級の受給が回復しました。審査請求の決定書の中で、社会保険審査官は、本件の「就労」について以下のように述べておられます。

「自己存在の証として就労にこだわり、コンビニエンスストアの店員として勤務しているが、業務は雑用で、理解のあるオーナーのもと支持的な援助・配慮を受け、週1日4時間勤務している程度で、安定した就労ができているとまでは言い難く、これら請求人の病状の経過、日常生活能力、労働能力等を総合的に認定すると、(略)2級の障害の程度(略)に相当すると判断する。」

 

事例15:精神病の病態(うつ病)を示す強迫神経症で受給

 笹岡さん(仮名 50代女性)の夫から、次のような相談を受けました。「妻は戸締りを何回確認しても不安で、強迫神経症と診断されました。障害年金の手続きの支援をお願いします。」

 認定基準は、「神経症は、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。」としています。

 笹岡さんにお会いして話を伺いました。「最初は鍵閉め確認から始まりました。手洗い、電気・ガスのON/OFF、洗濯、掃除、炊事とどんどん確認の対象が増えました。自分でも頭では『本当は鍵は閉めた』とはわかっているのですが、それでも、何回も何回も確認しないと不安で、次の行動に移ることができません。自分ひとりでの確認では安心できなくなり、昼夜かまわず夫にも一緒に確認してもらわないと気がすまなくなりました。日常生活に大きな支障が出たため、精神科を受診しました。しかし、お薬をのんでも一向に確認行為はおさまりませんでした。戸締り確認に疲れ果て、そもそも戸締り不要にするために外出をしなくなりました。家中が清潔であることの確認も苦しいので、自室に一日中ひきこもるようになりました。仕事帰りの夫に家事を全部任せっきりになってしまい、自己嫌悪感が強まりました。」

 強迫観念による気分の落ち込みや強迫行為を避けようとして引きこもるといった行動が、うつ病の発症につながりやすくなっています。強迫観念による恐怖や不安は大きくなり、それを解消するための強迫行為にかかる時間はドンドン増えていきます。そして、次第にあらわれる日常生活での支障や家族・友人とのトラブルが自責の念につながりうつ病をまねくのです。強迫性障害という病気が原因と理解できても「一生治らないのではないか?」という絶望感がうつ病につながるケースもあります。

 主治医の佐々木先生に、「神経症は認定の対象とならない」ことをご説明し、次のような記述がある「診断書記載要領」をお渡ししました。「①「障害の原因となった傷病名」欄に神経症圏(ICD-10コードがF4)の傷病名を記入した場合であっても、「統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害」または「気分(感情)障害」の病態を示しているときは、その病態とICD-10コードを記入してください。」

 佐々木先生は、診断書に「強迫性障害(F42)、うつ病エピソード(F32)」と記載してくださいました。うつ病エピソードは、気分(感情)障害の一種です。その結果、笹岡さんは障害基礎年金2級を受給されました。

 後日、笹岡さんの夫は、ご本人の近況を報告して下さいました。「『パートで働かなければ』という不安から解放されたおかげで、鍵閉め確認などの強迫症状がマシになりました。」

 近田さん(仮名 50代男性)の妻の陽子さんから、次のような相談を受けました。「夫はうつ病になり解雇されてしまいました。知人から障害年金を勧められましたが、家計を支えるために私が働いているので手続をする余裕がありません。支援をお願いします。」

 近田さんにお会いして、病状を聴き取らせて頂きました。「大卒後、エンジニアとして勤めていた会社が倒産しました。再就職しましたが、前の会社で培った技能が活かせず、ゼロから仕事を覚えないといけないというプレッシャーと焦りから情緒不安定になり、長続きしませんでした。食欲不振・不眠等が出現し、心療内科を受診したら『うつ病』と診断されました。まだ、病状は改善していませんでしたが、無理して再就職しました。妻子を養うために『早く前職と同じくらいの給料を稼がなければならない』と気持ちばかりが焦り、現実には、集中力・判断力が低下していて仕事が身につきませんでした。職場での人間関係もうまくいかず、欠勤が多くなったため解雇されました。まったく自信が無くなり、ひきこもっています。」

 主治医の梅田先生は、聴き取りによって作成した病歴・就労状況等申立書も参考にして診断書を作成して下さいました。その結果、近田さんは、障害厚生年金2級を受給されました。

 後日、陽子さんは近田さんの近況を報告して下さいました。「障害年金のおかげで、すこし気が楽になったみたいです。以前のように正社員にこだわって無理をしなくなりました。ご近所の農家が病気に理解のある方で、マイペースで果物の収穫のお手伝いをさせて頂いています。」(当事務所がある南河内は、ぶどう・いちじく・みかん等の果実栽培が盛んです。)

 

 小山さん(仮名 50歳台男性)は、職場の上司から長年執拗なパワハラを受けていました。それが原因で、うつ病を発症し退職せざるを得ませんでした。

 厚労省は、パワハラを以下の6つに類型化しています。①身体的な攻撃、➁精神的な攻撃、③人間関係からの切り離し、④過大な要求、⑤過小な要求、⑥個の侵害

 パワハラは、心臓血管疾患に対しても、うつ病に対しても、発症原因となります。一度だけのパワハラでも2.27倍、長期的なパワハラを受けると、4.81倍もうつ病にかかりやすくなるという報告もあります。パワハラは、人の尊厳を踏みにじり人権をないがしろにする行為ですから、精神に悪いのです。

 小山さんは、長期間、上司から、私的なことに過度に立ち入られる(⑥)・遂行不可能な業務の強制(④)・取引先との電話応対中に同僚の面前で大声で怒鳴り散らされる(➁)などのパワハラを執拗に受けました。

 小山さんは耳鳴り・頭痛・不眠・食欲不振・めまいなどの症状が出現したため、精神科を受診した所、うつ病と診断されました。

 退職し、2年間治療に専念されましたが改善せず、この度、障害厚生年金2級を受給されました。小山さんは「障害年金のおかげで、無理して復職しなければ、という焦りはなくなったが、悔しさは消えない。」と話されています。

事例19 パワハラでうつ病に 労災認定され2級受給

 上野さん(仮名 50代男性)は、機械メーカーで、営業に従事していました。平成20年5月頃から、業務中に先輩社員3名から、拳骨や工具でこぶができる程、頭部を殴られたり、「ボケ」「死ね」「辞めてしまえ」等と大声で怒鳴りながら蹴られる等の暴行・暴言を4ゕ月間、執拗に受け続けました。上野さんは耐えられなくなり、上司に訴えた所、上司にも暴力を振るわれた上、「うちはこういう会社だから、いやなら辞めてくれ」と言われました。上野さんは絶望し、不眠・偏頭痛・心臓が痛くなる等の症状が出現しました。

 平成20年12月、脳神経内科を受診し、抗うつ薬等による薬物療法を受けましたが改善しないため、3ゕ月間休職後、平成21年7月、退職させられてしまいました。

 上野さんは、業務中に上司達の暴行等によって精神疾患になり退職になってしまったので、労災申請を行いました。平成24年1月、「業務上の事由による精神障害」として労災認定され、休業補償給付・障害補償一時金を受給されました。

 退職後、療養に専念されましたが改善が乏しいため、令和2年1月、精神科に転医、うつ病と診断され、現在も通院中です。上野さんは、障害厚生年金2級を受給されました。

 加害者・会社は、いまもなお非を認めていません。上野さんは「いまでも、ふとした瞬間に当時のことを思い出し、心臓が痛くなります。会社は、謝ってほしい」と語っておられます。

(写真は本文とは関係ありません)

 

 近藤さん(仮名 40代女性)は、事務員として働いていましたが、うつ病を発症したため退職し、療養に専念しても改善しませんでした。

 主治医の川田先生(仮名)に、障害認定日(初診日から1年6ゕ月後)と現在の診断書を書いて頂き、5年分遡及して障害基礎年金2級を受給できました。

 うつ病の方の中には、ある程度まで改善しているのにすっきりと良くならない、元の職場に戻れない、もしくは戻っても容易に再発する方がおられます。そういう方の中には、自己肯定感が低い方が多い、と言われています。自己肯定感の低さが、うつ病の原因というわけではないのですが、症状の回復、特に社会復帰や社会参加の障害になる場合がある、とのことです。

 自己肯定感が低いために悩んでいる方に「自己肯定感が低いとよくないから高めなさい。自分を肯定的に捉え、自分の価値を認めなさい」と勧めても、自己に対する否定的、批判的評価と受け取られる可能性があります。近藤さんも「褒められても実感がわかず、虚しい」と述べておられます。頭で理解したり他者から言い聞かせられたりするのではなく、「自分には価値がある」「自分は存在してよい」と感じられる体験を繰り返すことで自己肯定感が高まる、と言われています。

 近藤さんは、川田先生に勧められ、犬を飼うことにしました。犬を迎えて1年後の近藤さんの感想です。「抱っこすると温もりが伝わる。この子も生きているんだなぁ。私が死んでしまったら、この子を守ってあげられない。」

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